SLAMスキャナ・データ事例(トンネル)

 トンネルは、特徴のない構造が連続しているためSLAMスキャナーが苦手としているシーンです。いくつかのトンネルをスキャンして検証してみました。

幻の穴堰(約400m)

「幻の穴堰」とは?

かつて荒れ地であった十和田三本木を開拓するために、南部盛岡藩士・新渡戸傳が奥入瀬川の上流にさかのぼって水の取り入れ口を設け、途中穴堰(トンネル)を通して三本木原まで水路を作ったのが現在の稲生川です。

さらなる水量を確保するため、嫡子・十次郎(新渡戸稲造の父)が2本目の水路を建設するも、未完に終わって閉ざされることになったのが、「幻の穴堰」です。全長900mのトンネルの内、約400mが公開されています。


スキャンしてみた

トンネルは手掘りで、大人が立って歩ける場所もあれば、かなりかがまないと進めないところもあります。公開部分の400mを歩いてスキャンしました。


比較的良好にスキャンができました。手掘りのトンネルで壁面がごつごつしているのと、経路が曲がりくねっているのが好奏したのでは・・・と考えています。


太田洞門(約300m)

新潟県長岡市太田地区の洞門です。軽トラックの荷台にスキャナーを設置して、10~15km/hでスキャンしました。

洞門なので、通常のトンネルと比較すると特徴となる構造物が多数存在しています。隙間から外の地形も捉えることが出来ていますので、良好にスキャンすることが出来ています。


濁沢トンネル(約500m)

一般のトンネルの場合は、内側がのっぺりしていて特徴が少なく自己位置推定がうまくいかないシーンです。洞門と同様、軽トラックで10~15km/h程度でスキャンすると、以下の様な点群を得ることが出来ました。

うまくスキャンできているように見えますが、実際はもっと長いトンネルです。LiDARはレーザーを搖動させながら回転するセンサーですので、移動速度が速いとレーザー光が当たらず計測できない箇所が増えます。特徴点の少ないトンネルのようなシーンでは致命的です。

自己位置推定がうまくいかず、実際は走行速度より遅れて推定しているような感じの結果となってしまいました。

徒歩でスキャンすると、良好な結果を得ることが出来ました・・・と、言いたいところですが・・・道路の白線端部をVRS計測して出入口間の距離を検証すると、実際より3mほど短くなっています。

トンネル内にパイロンを並べて、意図的に特徴点を増やすなどの工夫が必要だと思います。どのような構造物をどう配置するのが効果的なのか?今後の研究課題です。