iRTK5x 傾斜補正機能の検証

はじめに



iRTK5xは、キャリブレーションフリーでチルト測量を実現する、IMUを搭載しています。従来の方位センサ方式では難しかった 磁気環境においても、高精度に傾斜方向を検知することができます。

製品の詳細情報カタログのダウンロードは、こちら

傾斜補正機能の性能について検証してみました。

IMU初期化手順

初期化の流れ

傾斜補正機能を使用する前には、初期化作業が必要です。作業自体は以下の3ステップの手順を踏むことで簡単に行うことができます。
  1. RTK-FIX解を得る
  2. GNSS受信機を静止させる
  3. GNSS受信機を動揺させる
以上で初期化が完了し、傾斜補正が利用できます。
GNSS受信機が30秒ほど静止した状態が続くと、自動的に傾斜補正機能がストップしますが、GNSS受信機を動揺させるかそのまま歩き始めれば、ふたたび傾斜補正機能は再開します。

動画

以下は、一連の初期化~観測~測設の流れを簡単に説明した動画です。

精度検証

検証(1) 傾斜角を10°~60°まで変化させてみる


傾斜補正した測位結果と、気泡管整準で測位した結果と比較してみました。傾斜方向は東西南北4方向でそれぞれ10°~60°変化させます。

検証結果

30°以内ではおおむね2-3cm以内に入っています。60°まで傾斜させても、傾斜補正を継続できています。

詳しい検証結果は、当社WebサイトにPDF形式で公開しています。

検証(2) 耐磁気性能の評価

傾斜方向の検知に磁気センサを用いたGNSS受信機の場合、周辺が金属で囲まれているなどの磁気環境では正常に傾斜方向を検知できない場合があります。
IMUを用いた傾斜補正の場合、磁気環境に対して高い耐性を持っています。
条件としてはありえない環境ですが、GNSS受信機側面に磁石を貼り付けて傾斜補正を行ってみました。
検証結果
磁気センサを利用したV90plusの場合、磁石の影響を大きく受けます。傾斜方位角のデータを見てみると、傾斜方向に関係なく同じ傾斜方向へ補正をかけているようです。磁石によって正しく傾斜方向を検出できていません。(高さ方向は比較的正しく補正されていますので、傾斜センサ自体は正常に動作しています。)
iRTK5xの方は、磁気環境の影響を大きく受けることなく傾斜補正が行われています。


詳しい検証結果は、当社WebサイトにPDF形式で公開しています。

注意:磁気センサーがダメージを受け、キャリブレーションしきれなくなってしまう可能性があります。決して真似しないでください。

検証(3) 直線上に沿って測位してみる

壁面のコーナーなどRTKポールを垂直に立てられない状況は、チルト測量が有効に使用できる環境です。実際の壁面に沿って9点ほど測位して、その精度を検証してみました。

コントロールソフトHi-Surveyには、ポイント・ラインと呼ばれる計算機能があり、始点~終点を結んだ直線と任意の点との間の距離を計算することができます。
観測した9点(Pt0~Pt8)から、Pt0を始点・Pt8を終点として結んだ直線とそのほかの点との距離を計算してみます。


検証結果
傾斜補正を利用した観測で、ほぼ直線上を観測できています。